トピック30 墓地の相続登記
「墓地」と一口に言っても実態は複雑で、その指し示す範囲、その種類・形式、その権利関係などにおいて、多種多様な意味合いを持っています。
いわゆる墳墓の敷地である土地であって、登記された土地であり、地目が「墓地」とされ、登記名義人が個人であるような土地について今回考えますと(法人が土地を所有する管理墓地等では、登記の問題は発生しません)、その登記名義人が死亡したのであれば、登記的には、当該土地を承継した者に名義を移すべきことになります。
ここであえて「相続」ではなく「承継」としたのには理由があります。
民法897条で次のように規定されているからです。
民法897条(祭祀に関する権利の承継)
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条(※)の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
※相続の一般的効力を規定した第896条のこと
つまり「墳墓」の承継は一般的な「相続」とは違う、ということです。そして「墓地」は「墳墓」と一体の物であると考えることができ、墓地たる土地の所有権移転の登記においては、被相続人が遺言で指定したり、慣習に従う等の方法により、「相続」ではなく「祭祀物承継」という登記原因で登記することができます。
ただ、実務的には、墓地たる土地であっても「相続」を登記原因として所有権移転登記をすることができます。当事務所では、ご相談者らが遺産分割協議によって誰が墓地たる土地を取得するのか決められるのであれば、墓地たる土地も含めて遺産分割協議書を作成し、相続登記をする方法を行っています。この方法が最も現実的な方法と思われます。
[令和6年4月]
トピック29 相続人申告登記
令和6年4月1日から、新しく相続人申告登記というものができるようになります[不動産登記法第76条の3]。
これは、相続登記の申請の義務化に伴って、申請を怠れば過料に処せられる可能性もあるようになったところ、期限内に申請ができないような場合には、この相続人申告登記をすれば、その申告者は申請義務を履行したものとみなされる、つまり過料を回避することができる、というものです。
相続人申告登記をすると、登記上では相続人(の1人)として自分の住所氏名が載ることになります。相続不動産を実際に管理している者が自分以外の相続人であったとしても、登記上に自分の住所氏名が載るので、権利関係者として第三者から連絡が来ることもあり得ますので、注意が必要です。
また、重要なのは次の2点です。
①相続人申告登記は手続的な手当に過ぎず、実体的には遺産分割によって権利の帰属を確定させるべきであることには変わりがない。
②相続人申告登記をしたとしても、遺産分割によって自分が所有権を取得したときには、やはり登記申請義務があり、これも過料の対象になる。
あくまで教科書的に言いますと、相続の開始があれば、速やかに共同相続人間で遺産分割協議を済ませて不動産の取得者はその旨の登記をするのが理想です。これを遅くとも3年以内にできるのであれば、相続人申告登記をする必要はありません。
[令和6年3月]