民法は市民に身近な法律関係を規定しており,その中には「お隣さんの竹や木の枝が境界を越えて自分の土地に入ってきたときに何ができるか」といった生活感あふれる(!?)問題に関する規定もあります。
従前の規定はこうでした。
民法第233条第1項
隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは,その竹木の所有者に,その枝を切除させることができる。
これが,この度の改正により令和3年4月28日から2年以内に次の規定が施行されることになります。
民法第233条第1項
土地の所有者は,隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは,その竹木の所有者に,その枝を切除させることができる。
同条第3項
第1項の場合において,次に掲げるときは,土地の所有者は,その枝を切り取ることができる。
一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず,竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
二 竹木の所有者を知ることができず,又はその所在を知ることができないとき。
三 急迫の事情があるとき。
これまでは,お隣さんの竹や木が境界を越えて自分の土地に入ってきたときは,自分で切ることはできず『お隣さんに切ってもらう』という構図でしたが,これでは,お隣さんが応じてくれない,お隣さんの所在が分からない,といった理由で解決できないことがありました。
その点,改正法では一定の場合に『自分で切る』ことができるようになりましたので,この問題で困っていた方々には朗報ですね。
ところで,境界を越えてきた枝を,自分の土地で作業して切除できるならいいですが,相手の土地に入らなければ切除できないような場合はどうなるのでしょうか,結局,泣き寝入りなのでしょうか?
大丈夫です。『境界を越えてきた枝を自分で切る』ために必要な範囲なら,隣地を使用することができるということも,改正後の民法209条に明記されました(※隣地を使用する前に予めお隣さんに通知しなければならないこと等も規定されていますので,ご注意ください)。
民法第209条第1項
土地の所有者は,次に掲げる目的のために必要な範囲内で,隣地を使用することができる。ただし,住家についてはその居住者の承諾がなければ,立ち入ることはできない。
一 (省略)
二 (省略)
三 第233条第3項の規定による枝の切取り
[令和3年5月]