召田司法書士・行政書士事務所|長野県松本市の相続登記

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【トピック 23】通信販売はクーリングオフできない?

突然の訪問販売を受け,うっかり商品を購入してしまった場合には,いわゆるクーリングオフ制度が法定されており,きちんと手続をとれば救済されることはご存知の方も多いのではないでしょうか。
特定商取引法の定めるクーリングオフは,とても強力な制度です。
基本的には契約した日から8日以内に契約解除(クーリングオフ)する旨の書面を発すれば,特に理由はなくても契約を解除することができます[特定商取引法第9条]。クーリングオフによる契約解除では,販売業者は購入者に違約金等を請求することができず[同条第3項],商品の使用対価を請求することもできません[同条第5項]。また,商品の引取り費用は販売業者の負担になります[同条第4項]。

さて,現代社会では「通信販売」が日々大量に行われておりますが,この通信販売でもクーリングオフができると誤解されている人もいるのではないでしょうか。結論から言いますと,通信販売では,訪問販売等のクーリングオフとは異なる制度が法定されています。
通信販売業者は,広告表示において(ネット通販ではいわゆる最終確認画面においても)契約解除についての特約(いわゆる返品特約)を明示すれば,理由のない解除はできない(返品不可)とすることもできます。特定商取引法は,通信販売では広告に契約解除に関する事項(返品特約があればその内容)を表示しなければならないと定めていますので,健全な通信販売業者であれば返品について何らかの表示をしているはずですから,その旨確認(できれば保存)したうえで注文するのが良いでしょう。
もし返品特約が表示されていなければ,基本的に商品を受け取った日から8日以内であれば特に理由はなくても契約を解除することができます[特定商取引法第15条の3]。ただし,この解除の効果として,上記のクーリングオフのような販売業者に対する制限は定められていない一方で,商品の引取り費用は購入者の負担になると定められています[同条第2項]。

商品に自信がある優良な企業であれば,返品可能とすることで信頼性やイメージが高まるということもあり,もはや返品可能が当り前ともいえる状況になってきています。そのため,ついつい通信販売全体にクーリングオフ制度があると勘違いしてしまうのかも知れません。そもそも一旦契約が成立すれば,理由もなく契約解除できないというのが原則なのに,クーリングオフが原則であるかのように捉えると危険です。通信販売では返品不可ということも十分あり得ますので,ご注意ください。
[令和4年6月]