不動産の相続登記等を手掛ける中で見かけた,少々ユニークなケースについてご紹介します。
一般的に,土地を代々所有し続けているような場合,その登記を見れば,祖父→父→本人というように,誰が受け継いできたのか一目瞭然になります。もちろん相続登記がきちんと行われていたとして・・・
ところで,稀ではありますが,親の名を代々襲名する伝統がある方々がいらっしゃいます。由緒ある家柄で,親が亡くなって先祖代々伝わる家業を継ぐような場合に,子が親の名を襲名(名の変更)する,というものです。
この場合には,登記の所有者欄に次のように記録されることがあります。
所有権移転 山田太郎 大正〇年相続
所有権移転 山田太郎 昭和〇年相続
所有権移転 山田太郎 平成〇年相続
(分かり易くするため簡略化しています)
なにっ,山田太郎さんから山田太郎さんに所有権移転???
予備知識なく,いきなりこれを見たら,すぐには理解できないかも知れません。
別の人物(親と子)が同じ名前ということは,家業の継続性を表示するには有効なのですが,人物を区別したいときには混乱の原因となります。
戸籍上,子が親の名に変更するのは,親が亡くなってしばらく経ってからだと思われますので(戸籍法第107条の2 正当な事由によって名を変更しようとする者は,家庭裁判所の許可を得て,その旨を届け出なければならない。),例えば,相続が開始して直ちに相続登記を行って,その後に氏名変更の登記をしたならば,次のような記録になります。
所有権移転 山田太郎 大正〇年相続
所有権移転 山田正男 昭和〇年相続
氏名変更 山田太郎
所有権移転 山田光男 平成〇年相続
氏名変更 山田太郎
(正男や光男は,襲名前の名前ということになります)
これであれば,襲名が行われていることがよりハッキリ理解できますね(⌒∇⌒)
もっとも,そもそも襲名は,不動産登記を使って明らかにするようなものではなく,戸籍を使って明らかにすべき事柄ですけどね。
このような伝統のあるお方は何かとご苦労が多いのではないかと拝察いたします。
[令和2年12月]