相続登記がされないまま長期間放置されて,土地の所有者が分からなくなることが社会問題化しています。
そこで国がとった対策のひとつが「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」です(以下単に特措法という)。
その第4章「土地の所有者の効果的な探索のための特別の措置」の第2節「特定登記未了土地の相続登記等に関する不動産登記の特例」に,相続登記に関する特例が定められています。
これによれば,登記官は,公共事業の起業者等からの求めに応じて調査した結果,
①特措法第2条第4項の特定登記未了土地(※)に該当し,かつ
②所有権の登記名義人の死亡後30年を超えて相続登記等がされていない
土地について,さらに相続人の調査をしたうえで,「長期相続登記等未了土地」であることの付記登記を行ったり(法定相続人情報が作成されます),相続人に対して相続登記を促す通知(※)をすることができるのです。
もしかしたら,そのような通知を受け取った方がいらっしゃるかも知れません。そんなときはぜひ司法書士にご相談ください。
特例に該当する場合には,相続登記の申請に際し,相続を証する戸除籍謄本等の添付が省略できるといったメリットがあります。
通常,被相続人が死亡して30年超も経てば,戸除籍謄本等は数十冊,その取得手数料は数万円,調査期間は数カ月に及ぶ,なんてことはざらにありますので,その分の手間と経費がなくなるだけでも助かりますね。
一方で気がかりなのは・・・被相続人が死亡して30年超も経てば相続人が数十人に及ぶこともざらにある,ということです。つまり,全く知らない人たち数十人で共有し,持分は数十分の一しかないようなときに,現実的にどう対処するかが問題となるでしょう。
このような問題に接すると,やはり相続登記はきちんと速やかに済ませておくべきだな,と改めて強く思います。
※特措法第2条第4項の特定登記未了土地とは,所有権の登記名義人の死亡後に相続登記等がされていない土地であって,土地収用法第3条各号に掲げるものに関する事業を実施しようとする区域の適切な選定その他の公共の利益となる事業の円滑な遂行を図るため当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索する必要があるもの,をいいます。
※相続登記を促す通知が来たからといって,当該土地が必ずしも公共事業の対象となるとは限りません。
[令和2年8月]