トピックス37では「特別受益の持戻し」を取り上げました。遺贈や、いわゆる生前贈与(まとまった財産を推定相続人に先渡しすること)を受けた相続人がいる場合、そうでない相続人と公平になるようにする規定でした。
ただし、被相続人のなかには、「持戻し」の効果をあえて求めないことだってあるはずです。そもそも被相続人が遺言をするとき、法定相続分に拘束されて遺言をしなければならないわけではないのですから・・・。
そんなときの方法としては、遺言で遺産についてきっちり各相続人が相続する分を決めておくとか、「持戻し免除の意思表示」をしておく、などが考えられます。
あまり聞きなれない「持戻し免除の意思表示」ですが、これは、特別受益に該当するものについて、持戻しをしない、とするものです。これをすれば、通常は、特別受益者の利益となります。このような被相続人の意思は、民法第903条第3項(トピックス37参照)の規定によって、優先されることになっています。
では、この持戻し免除の意思表示は、実際どのようにするのでしょうか?遺贈の場合は、遺贈と同じ遺言においてするのが一般的です。生前贈与の場合は、特別の規定はありませんが、後の紛争回避のためには、やはり遺言で行うことが有効でしょう。例えば、「長男〇〇に生前贈与した≪特別受益となる財産≫について持戻しを免除する」などと書くことが考えられます。
「令和7年11月」